低侵襲手術(ロボット手術)の最前線
当院外科における低侵襲手術(腹腔鏡下手術)は1990年胆嚢摘出術に端を発します。当時は内科外科合同で8時間をかけて最初の手術を完了した記録があります。帝京大学から見学者も来ていました。今では30分で終わる平易な手術となりましが、手術の歴史を変える大きな一歩でした。その後外科ではヘルニア手術、十二指腸潰瘍穿孔手術に適応を広げますが、本格的なラパ(=腹腔鏡下手術の意味)は2008年からです。年間300例ある大腸がん切除術のうち早期がんを対象にラパを開始し、矢継ぎ早に胃切除、肝切除、膵尾側切除を行っています。現在日本でも少数の施設しか施行されていない、高難度手術である腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を平均5時間半の手術時間で行っています。
ラパでの十分な経験を踏まえて、現在はダヴィンチを用いたロボット手術も行っています(診療科、外科参照)。基本的にはラパの延長線上にあるロボット手術ですが手術器具が高額であるため適応を決めて行っています。泌尿器科では以前から前立腺がん、腎がんにロボット手術を適応していて今では基本術式となっています(診療科、泌尿器科参照)。今後は産婦人科も参戦予定です。ロボット手術は発展途上にありますがコスト高が難点です。国産メーカーのロボット参入が待たれます。
私たちのラパ/ロボット手術に対する考え方は一貫しています。一つには開腹手術を凌駕しないこと、現状高度進行がんは安全面からもラパは非適応と考えています。二つ目は患者さんのQOLを尊重しつつもがんに対する根治性(完全切除)を第一目標とすること、最後に技術革新によってもたらされるあらゆる可能性は否定せず積極的に導入して、最新医療を提供することです。ラパ手術に特化した内視鏡手術室(図1)と当院のロボット手術器具(図2)を供覧します。
図1
図2 手術ロボット(ダヴィンチ)