最新抗がん剤治療(ゲノム医療)
近年、がん薬物療法における免疫療法、特にニボルマブ(オプジーボⓇ)をはじめとした免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療成績向上には目をみはるものがあります。ICIは多くのがん種で標準治療または標準治療の一部となっており、かつ適応するがん腫の拡大に伴い投与を受ける患者さんの数は年々増加しています。皮膚がんから始まり、肺がん、腎がん、胃がん、食道がん、リンパ腫、頭頸部がんと広がっています。しかし、良いことばかりではありません。ICIは免疫反応の活性化をはかってがん細胞を攻撃する薬ですが、正常な細胞を攻撃してしまうと自己免疫疾患様の副作用を生じることがあります。甲状腺ホルモンなどが出なくなってしまう内分泌系障害、肺障害、大腸炎、肝・腎機能障害、皮膚障害など多種多様であり、その対応には色々な診療科の協力が必要となります。つまりは、ICIの副作用をうまく管理できることが、がん薬物療法の成功を左右すると言っても過言ではありません。当院では、ICIの副作用に対する院内チームとして「OASiS(Ogaki Alliance System for irAE Support):オアシス」を立ち上げました。各診療科の医師、薬剤師、看護師など多職種で構成され、それぞれが高い専門性を発揮しながら連携することで、的確かつスムーズな副作用対策の提供を目的としています。がん拠点病院として、最新の抗がん剤治療を提供するだけでなく、患者さんの心の支え・癒しの場(オアシス)となるべく、治療と副作用の両面から患者さんをサポートする体制づくりを今後も充実させていきたいと考えています。
また、次世代のがん個別化治療の1つであるゲノム医療にも力を入れています。当院ではゲノム外来(『がんに関する情報』参照)を毎週開いています。各診療科で抗がん剤治療だけでは不安を感じる患者さんはぜひ各外来で相談してみてはどうでしょうか。ゲノム医療とは、患者さんの遺伝子情報に基づいて最善の治療薬を選択することですが、それらの治療は時に治験(未承認医薬品の承認を得るために行われる臨床試験)である場合もあり、すべての治療が当院で行えるわけではありません。そのため、治療ができる施設へ適切に紹介し、連携しながらその後の治療にあたっています。しかし、治療を受ける場所が遠方であれば、それが患者さんの大きな負担になることもあります。今後は1つでも多くの治療を当院で完結できる体制を整備していくことを目標に、ゲノム医療をますます発展させていきたいと思います。