放射線治療
新しい放射線治療室および放射線治療計画専用CT装置室等の建設工事が完了し、2010年8月より、最高に充実した環境である放射線治療室が本格稼動を始めました。
完成した放射線治療室には、長年にわたって放射線治療を追及してきたドイツに本社のあるブレインラボ社(Brain LAB)とアメリカに本社のあるバリアンメディカルシステムズ社(VARIAN Medical Systems)の深い絆によって誕生した革新的な高精度放射線治療統合システムであるNovalis(ノバリス)Txが導入されます。
Novalis Tx by Brain LAB & VARIAN
Novalis Txの特徴について
Novalis Txは、定位放射線治療(SRS:Stereotactic Radiosurgery , SRT:Stereotactic Radiotherapy)、強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiotherapy)、画像誘導下放射線治療(IGRT:Image Guided Radiotherapy)の高精度放射線治療に対応することができる最先端の放射線治療装置です。
①従来型のNovalisの最大照射野10×10cmに比べて、Novalis Txは、40×22cmの最大照射野により、脳・頭頚部のみならず、肺・肝臓・前立腺の体幹部領域などの大きながん病巣にも治療範囲が拡大されました。
②2.5mmのマイクロマルチリーフの高性能放射線ビーム形成装置を内部に搭載したことにより、がん病巣に的確にピンポイントで治療することができます。
③Novalis Txには、EPID:Electric Portal Imaging Deviceによる二次元位置照合装置、OBI:On Board Imaging Device、Corn-Beam CTによる三次元位置照合装置、Exact Tracking Systemによる赤外線マーカー位置照合装置などが搭載されており、従来型の放射線治療と比べて飛躍的の治療精度の向上が期待できます。
④放射線治療寝台を遠隔的に自動6軸制御することにより、治療時間の短縮を可能としました。
Exact Tracking system, EPID On-Board Imaging
Corn-Beam Computed Tomography
Novalis Txによる放射線治療の開始時期について
2010年8月より、一般的な放射線治療から開始しておりますが、定位放射線治療および強度変調放射線治療の高精度放射線治療においては、6ヶ月から1年の準備期間を要した上で順次施行していく方針でおります。
今後、市民の皆様の御期待に沿えるよう、放射線治療医、医学物理士、放射線治療専門技師、診療放射線技師の放射線治療専門スタッフが、力を結集して邁進する所存であります。
御理解と御協力の程、宜しくお願い申し上げます。
【1】Novalis Txによる定位放射線治療について
頭部領域における頭蓋内腫瘍(転移性脳腫瘍など)および耳鼻科領域(聴神経腫瘍)、眼科領域(視神経腫瘍)、頭蓋内血管病変(モヤモヤ病、動静脈奇形) には、γ線によるガンマナイフ定位放射線治療が数多く施行されてきましたが、ここ数年、X線を使用した放射線治療装置による定位放射線治療が施行されてい ます。
①Novalis Txによる定位放射線治療では、頭頸部領域のみならず、早期の肺がんや肝がんなどの体幹部領域の治療も1回~数回の放射線照射で行えるようになります。
②一般的な放射線治療に比べ治療が短期間で済みます。手術に比べ侵襲性もありません。ガンマナイフに比べ頑強な固定具を装着する必要もありません。
③従来の放射線治療は病変の周囲にある正常組織にも影響が及ぶため、十分な線量が照射できませんでした。そのため治療効果も限定的でした。Novalis Txによる定位放射線治療がこの問題を解決させました。
④病変の輪郭に合わせて複数の方向から放射線を照射できるため、正常組織への被曝を極限まで抑えながら、病変部だけにピンポイントで照射することが可能です。
以上、定位放射線治療専用装置であるNovalisの後継機として開発されたNovalis Txは、定位放射線治療の更なる可能性を追求することが可能な装置です。
Novalis Txによる頭部定位放射線治療計画
Novalis Txによる頭部定位放射線治療法<
【2】強度変調放射線治療(IMRT)について
放射線治療は、がん病巣部の形状に放射線を極力絞り込んで照射を行います。こうして放射線のあたる部分と当たらない部分を作り、正常組織への照射を防ぎ ます。しかし、狙っている病巣のすぐ近くに放射線に弱い正常な臓器があったとすれば、それらの臓器にも放射線が当たってしまい、副作用として現れます。 IMRTは、放射線を病巣の形に切り取った中に、さらに放射線の強さを変化させて照射を行う方法です。これにより、がんに強い放射線を当てながら、すぐ近 くの正常臓器は、照射される放射線量を可能な限り抑えることができます。
IMRTを用いれば、これまで放射線治療の対象とならなかった部位のがんに対し、積極的な治療に望むことができます。現在のところで、積極的に施行され ている治療部位は耳鼻科領域(咽頭がんなど)、泌尿器科領域(前立腺がん)などです。今後は、その他の多くの治療対象部位への応用が予想されています。
Novalis Txの特徴として、従来法では固定多門照射(5~8門照射)で行うIMRTを、回転をしながら実施するRapid Arcという機構が装備されています。この方法により、治療時間の短縮し、患者様の負担を著しく軽減できます。
従来法による多門照射 IMRTによる多門照射
強度変調放射線治療の実際の線量分布
Rapid ArcによるIMRTと従来法固定多門のIMRT
【3】IGRT (Image-guided radiotherapy):画像誘導放射線治療
従来の放射線治療は、治療部位の近くに皮膚に書き込んだマークを用いて、治療中の位置合わせを行います。これは、皮膚表面の印だけを頼りに行う放射線治療では、身体の内部状態および臓器の移動などの位置関係はわかりません。
Novalis Tx に搭載されているIGRTの装備であるEPID、Exact Tracking System、On-Board Imaging System、Corn-Beam CTを用いることにより、内部の状態を二次元・三次元画像により確認して、照射部位を微調整した上で放射線治療を行うことができることにより、0.1mm単位での照射精度の向上が期待できます。
2D-2D Matching Image by EPID 3D-3D matching Image by CBCT