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前立腺がん

1.前立腺癌とは

前立腺は男性特有の精液を作る組織であり、膀胱の下部に尿道を取り囲むように存在します。通常は栗の実のサイズ程度の大きさです。前立腺癌は高齢者に多い癌であり45歳以下では稀で60歳以上で急増します。米国においては肺癌に次いで2番目に多い癌ですが、日本では現在のところ男性の癌では肺癌、胃癌に次いで3番目に多い癌であり、食生活の欧米化とともに2015年には肺癌に次いで2番目に多い癌になると予想されています。また前立腺癌患者の増加は食生活の変化のみならず、前立腺癌検診の普及で前立腺癌患者が発見されるようになったのも一因といえます。
前立腺癌は比較的進行がゆっくりで、症状としては排尿困難を認めるものがありますが、初期では併存する前立腺肥大症によるものであることもあります。進行して骨に転移すると腰痛など骨の痛みを訴えるようになります。
検診で前立腺特異抗原(PSA)の検査が普及してからは早期の段階で発見されることが多くなり、手術にて根治させることができる症例も増加してきました。

2.症状

  1. 排尿困難:癌が進行して尿道を閉塞することで起きます。併存する前立腺肥大症が原因のこともあります。
  2. 血尿あるいは膿尿:多くありません。
  3. 血精液症:稀です。
  4. 腰痛、骨痛:前立腺癌は骨に転移しやすいため、骨転移の症状によってこの癌が見つかることがあります。

3.診断

  1. 前立腺特異抗原(PSA:腫瘍マーカー)を採血し、4以上で異常とみなします。
  2. 直腸指診:肛門から指を挿入し前立腺の大きさ、硬さを診ます。前立腺癌では石様に硬く触れます。
  3. 超音波検査:前立腺癌は低エコーに写ります。癌が前立腺の外に浸潤していないか判断できることもあります。
  4. 前立腺生検:上記1)、2)、3)、で癌が疑われれば前立腺に針を刺して直接組織を採って調べ、病理検査を行います。前立腺癌と診断されたならば、下記5)、6)、7)で前立腺癌の広がり具合を調べ病期を診断します。
  5. CT:前立腺癌の広がりやリンパ節転移などが分かります。
  6. 骨シンチ:骨転移の有無を調べます。
  7. MRI:前立腺内部の構造や周囲浸潤の有無を調べます。

4.病期(ステージ)

病期A: 癌の症状なく検査結果も異常なしで、前立腺肥大症の手術などで偶然発見された癌
病期B: 前立腺内に限局する癌
病期C: 癌が被膜を越えて前立腺周囲の精嚢や膀胱へ浸潤したもの
病期D: リンパ節や骨に転移したもの

5.治療

1)手術療法

根治的手術:前立腺を精嚢とともに切除し、膀胱と尿道を吻合します。腫瘍の周囲のリンパ節を郭清します。合併症として尿失禁、勃起不全などがあります。
姑息手術:進行性前立腺癌や再燃癌などで尿道狭窄が出現し排尿困難来たしたとき、対処的に経尿道的前立腺切除術を行います。

2)内分泌療法

前立腺癌は男性ホルモンの影響を受けて発育するため、男性ホルモンの影響を消失させる治療を行います。手術前に癌の進行を抑えるために行ったり、手術後再発した症例で行うこともあります。以下の方法があります。
a) 外科的去勢術
b) エストロゲン剤,抗アンドロゲン剤,LH-RHアナログ剤

3)放射線療法

密封小線源を前立腺内に埋め込む体内照射と高エネルギーX線を前立腺に照射する体外照射があります。前立腺癌には有効性高く、局所的治療では手術療法に匹敵する。骨転移による骨痛の除去に利用されることもあります。合併症として放射線による膀胱炎、腸炎などがあります。

4)化学療法

前立腺癌に効果が認められている薬剤は数々ありますが、単剤で高い有効性を示すものはありません。現在は内分泌療法が無効になった症例などに使用され第一選択の治療法とはなっていません。

施行レジメン一覧

番号レジメン番号レジメン名
1 12130090_5 ★Tri-weekly DOC (60) (エストラサイト)
2 12130110_7 ★PTX + CBDCA (100/5) (エストラサイト)
3 12130270_2 ★Monthly DOC (60) (エストラサイト)
4 12130280_2 ★ジェブタナ(25)(プレドニン)
5 12130290_1 ★Monthly ジェブタナ(25)(プレドニン)

6.進行度別治療法

病期A、B: 内分泌療法で経過を診ていく方法と手術療法が第1選択となります。
病期C: 内分泌療法に放射線療法や化学療法併用することが多く、
手術は積極的には行われません。
病期D: 内分泌療法と化学療法が第1選択となります。
骨痛緩和などに放射線療法を併用することもあります。
基本的に手術は行われません。

7.予後

癌の分化度によって異なりますが、5年生存率は以下の通りです。

病期A: 約80~100%
病期B: 約70~100%
病期C: 約40~90%
病期D: 約20~80%