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五大がん - 大腸がん

1.大腸癌とは

大腸は長さ約2メートルの筒のような臓器で、結腸、直腸、肛門からなります。消化され、栄養が吸収されたあとの食べ物の残りかすから水分を吸収し、便を作り出す働きを担っています。
日本において大腸癌は急速に増加しています。年間の死亡者数は約3万5千人を超え、現在、肺癌、胃癌に次ぎ癌死因の第3位で、遠くない将来胃癌を抜くと予測されています。その原因として、日本人の食生活の変化、つまり、欧米化に伴う動物性脂肪摂取量の増加が大きく関与していると考えられています。
早期に発見された大腸癌に対する外科療法の成績は極めて良好です。しかし、たとえ進行していても、外科療法、化学療法、放射線療法を組み合わせることで治癒が期待できます。
大腸癌検診には、便中の血液の有無を調べる便潜血検査があります。大腸癌は出血しやすいからです。40歳以上の方にお勧めします。

2.症状

癌の場所が比較的肛門に近いと排便の時に出血したり、便に血が付いたりするという症状が現れることがあります。痔だと思って病院に行かずにいたら進行癌がみつかるという場合もあります。また、癌が大腸のはじまりに近いところにできると便秘や下痢をくりかえすといった、あまり特徴のない症状を来すこともあります。癌が大きくなり、しこりや痛みが現れて初めて受診される人もあります。
症状がある人は検診ではなく、医療機関に相談されたほうがよいでしょう。なお、当院では地域連携といって、近隣の医療機関と当院との連携を深めるように努力しています。心配のある方はこの機会にかかりつけ医を作られてはどうでしょうか。とくに一部では造影検査や内視鏡検査などを行っている施設もあり、仕事の合間をぬって検査をすすめることも可能です。もちろん万一大腸癌の疑い、または、大腸癌と診断され、当院で検査や治療を受ける必要があれば紹介により途切れることなく診療が引き継がれます。

3.診断

検診で便潜血陽性と言われたら、精密検査を要します。下記1)2)の検査では、下剤を飲んで大腸を空にして検査を行いますので、胃の検査に比べ多少負担がかかります。

1)注腸造影検査

肛門に細いチューブを入れて、そこから造影剤と空気を注入し、X線を当てて大腸の壁の写し絵を作り出し、病変をあぶり出します。15分くらいの検査で、通常、痛みはありません。

2)大腸内視鏡検査

肛門から細長い内視鏡を挿入し、大腸内腔をテレビモニターに映し出して詳細に検査します。注腸検査より精度が高く小さな病変を発見できます。また、病変の一部を採取して病理検査を行い、癌の有無を確認します。

3)画像診断(超音波検査、CT、MRI等)

癌の進行状況(周囲臓器へ広がりや他の臓器への転移)を精査するために、これらの検査を行います。いずれの検査もほとんど苦痛はありません。術後の再発検査にも用いられます。

4.治療

一般的癌治療には手術、放射線治療、化学療法(抗癌剤)などがあります。その他で有望なものには遺伝子治療や免疫療法がありますが、現在のところ大腸癌に一番有効なのは手術です。手術といっても現在では必ずしもおなかを切る必要はなくて、早期癌であれば肛門から挿入した内視鏡を用いて中から完全に切除することが可能です。
大腸癌は一番内側の粘膜から発生し、一部の癌は浸潤といって粘膜より深い層をこわして外に広がってゆく性質を身につけます。粘膜だけにとどまっている癌は癌の部分だけを切り取れば完治しますので、たいていは内視鏡切除で治ります。内視鏡切除は通常、数日間の入院で受けることができます。この場合も顕微鏡の結果が判明するのに1週間以上かかるので、その結果で治療が完結したか、さらに治療を要するかがわかります。
なお、完治であっても切除後は定期的に内視鏡検査を受けて、再発や、新たな病変ができていないかを見張る必要があります。

1)内視鏡的切除

大腸ポリープや早期大腸癌のうち、リンパ節転移の可能性がほとんどないものは、内視鏡的な局所の切除の対象となります。内視鏡的切除の方法としては内視鏡的スネアポリペクトミーと内視鏡的粘膜切除法(EMR)があります。 内視鏡的スネアポリペクトミーは茎のあるポリープに対して用いられ、スネアと呼ばれる針金を、茎の部分にかけて高周波で切除する方法です。EMRは平坦な病変に対して用いられ、病巣粘膜の下に生理食塩水などを注入して病変の粘膜を浮き上がらせ、スネアにて粘膜を焼き切る方法です。いずれの方法も開腹はせず、10分から1時間で終了できます。病変の大きさや程度により、短期入院治療もしくは外来治療が選択されます。偶発症としては、出血と穿孔がおこる場合があります。
内視鏡的切除は治療後も大腸が残り一般的に後遺症がないことも利点です。

2)外科療法

粘膜の外側に浸潤がはじまると、この場所には血管やリンパ管といった管が通っており、一部の癌ではこれを伝って転移が起こります。転移が起こっているかどうかを正確に診断する方法はまだないので、ある程度まで粘膜の外側に浸潤がある場合には開腹手術を行って転移があっても再発を防ぐ策を講じる必要があります。

通常開腹手術

手術が必要な癌がみつかると、外科を受診して手術の予定をたてることになります。当院ではなるべく手術前の待機期間を短くするよう努めております。数日から一週間程度の間に入院可能です。癌により大腸閉塞を起こした場合には、腸が破裂するおそれがありますので、すぐに手術しないといけません。大腸癌の切除は大腸を約20センチ切除し(血流の形により長く切除する場合もある)、リンパ節廓清を行います。これは、癌がリンパ管を伝って転移する場合があり、転移があってもそれらを囲い込むように切除して、完全に癌を除去するためです。具体的には腸間膜といって大腸の血流をまかなう血管やリンパ節をひとつの塊として切除します。 残された大腸の端と端を吻合、すなわち縫い合わせて手術は完結します。入院期間は、結腸癌で15日間、直腸癌では3週間ほどです。

腹腔鏡手術

この数年来、大腸癌に対する腹腔鏡手術が普及してきましたので、当院でも主に早期の癌の方を対象にこの方法を取り入れています。器械と手技の進歩により、直視下手術と同等の方法で切除できるようになったためです。おなかに穴を開けて、腹腔鏡というカメラで見ながらリンパ節廓清を行い、4センチの傷から腸を取り出して、おなかの外で切除して縫い合わせます。傷が小さくてすみますので、術後の痛みが少なく、回復が早いという利点があります。

人工肛門

大腸癌の手術というと人工肛門が心配だという方が少なくありません。詳しいことは必要なときにご理解いただけばよいのですが、大事なことは二つあって、第一に人工肛門が必要かどうかというのは癌のできた場所で決まります。癌を切除した後に腸をつなぎ合わせるためには、肛門からいくらかの腸が残らなければつなげません。これがあまりに少ないと、つなげませんし、いくぶん残ってつながったとしても、排便に関する後遺症に悩むことになるからです。ですから、癌の位置が肛門から遠い場合には人工肛門の必要はありません。次に、人工肛門というのは腸をおなかの皮膚に縫い付けることであって、器械をつけるのではありません。最近では優れた装具と人工肛門の手当の方法が進んだおかげで、人工肛門が必要であっても、普通の生活を送ることが可能です。

施行レジメン一覧

番号レジメン番号レジメン名
1 07060010_10 mFOLFOX6 (インフューザー)
2 07060040_7 FOLFIRI (インフューザー)
3 07060060_7 l-LV + 5-FU (250/600)
4 07060070_4 CPT-11 (150)
5 07060190_10 mFOLFOX6 (インフューザー) + BV(5)
6 07060200_8 FOLFIRI (インフューザー) + BV(5)
7 07060230_2 ★≪IRIS≫CPT-11 + S-1 (125/80) (TS-1)
8 07060500_5 bw mFOLFOX6 (インフューザー) + Cet(500) (初回)
9 07060520_5 bw mFOLFOX6 (インフューザー) + Cet(500) (2回目以降)
10 07060540_4 bw FOLFIRI (インフューザー) + Cet(500) (初回)
11 07060560_4 bw FOLFIRI (インフューザー) + Cet(500) (2回目以降)
12 07060470_3 bw CPT-11 + Cet (150/500) (初回)
13 07060480_3 bw CPT-11 + Cet (150/500) (2回目以降)
14 07060450_2 bw Cet単独(500) (初回)
15 07060460_2 bw Cet単独(500) (2回目以降)
16 07060300_5 ★XELOX (130/2000) (ゼローダ)
17 07060310_5 ★XELOX (130/2000) (ゼローダ) + BV(7.5)
18 07060360_8 mFOLFOX6 (インフューザー) + Pan(6)
19 07060380_6 FOLFIRI (インフューザー) + Pan(6)
20 07060400_2 Pan (6) 単独
21 07060410_4 ★≪SOX (再発)≫S-1 + L-OHP (80/130) (TS-1)
22 07060570_2 ★≪SOX+BV≫S-1 + L-OHP + BV (80/130/7.5) (TS-1)
23 07060580_1 ★ ゼローダ + BV (2000/7.5) (ゼローダ)
24 07060590_1 ★XELIRI (1600/200) (ゼローダ) + BV(7.5)
25 07060610_1 FOLFIRI (インフューザー) + サイラムザ (8)
26 07060720_1 FOLFIRI (インフューザー) + ザルトラップ(4)
27 07060730_1 FOLFOXIRI (インフューザー) + BV(5) (高用量)
28 07060740_1 mFOLFOXIRI (インフューザー) + BV(5) (通常量)
29 07060250_9 FOLFIRI (インフューザー) + Cet(400) (初回)
30 07060270_9 FOLFIRI (インフューザー) + Cet(250) (2回目以降)
31 07060320_2 Cet単独(400) (初回)
32 07060330_4 Cet単独(250) (2回目以降)
33 07060280_7 CPT-11 + Cet (100/400→250) (初回)
34 07060290_7 CPT-11 + Cet (100/250) (2回目以降)
35 07060340_9 mFOLFOX6 (インフューザー) + Cet(400) (初回)
36 07060350_9 mFOLFOX6 (インフューザー) + Cet(250) (2回目以降)

臨床試験または治験

番号レジメン番号レジメン名
1 07060620_1 [JACCRO CC-13 A群] FOLFOXIRI + BV(5)
2 07060630_1 [JACCRO CC-13 A群] 5-FU + l-LV + BV (2400/200/5)
3 07060640_1 [JACCRO CC-13 B群] FOLFOXIRI + Cet(400→250) (初回)
4 07060650_1 [JACCRO CC-13 B群] FOLFOXIRI + Cet(250) (2回目以降)
5 07060660_1 [JACCRO CC-13 B群] 5-FU + l-LV + Cet (2400/200/250)
6 07060670_1 [TRUSTY A群] FOLFIRI (インフューザー) + BV(5)
7 07060680_1 ★[TRUSTY B群] ロンサーフ + BV (70/5)
8 007060690_1 [JCOG 1018] 5-FU/l-LV + BV(5)
9 07060700_1 [JCOG 1018] ★ゼローダ + BV (2500/7.5) (ゼローダ)
10 07060710_1 [JCOG 1018] mFOLFOX7 (インフューザー) + BV(5)

5.術後管理

癌が完全に切除されたように思われても、体のどこかに隠れていて、しばらくすると大きくなってくる場合があります。これが再発で新しく癌ができたのではありません。再発は、肝臓、肺などに起こる場合が多いので、これらを定期的に検査して見張るようにしています。再発の危険は癌の進行度と関連しますが、それは単に大勢の患者さんで統計を調べて多い少ないと言っているだけなので、どの患者さんが再発するかをあらかじめ見分ける方法はありません。ですから、手術を受けた方はみなさん、3年程度は年に3-4回、その後は年に2回程度、検査しています。大腸癌は再発の場合でも手術により治るチャンスがありますので、手遅れになる前に再発を発見する必要がありますが、通常、このような間隔で検査をしていれば治療の選択肢が減ることはありません。

6.予後

病期は大腸の壁にどれだけ癌が浸潤しているか、リンパ節転移があるかどうか、肝臓など離れた臓器への転移があるかどうかにより6段階に分かれます。2005年版大腸癌治療ガイドラインによれば5年生存率(手術を受けた人の中で5年後に生きている人の割合を統計学的手法により算定)は結腸癌では病期Iで90.6%、IIIbで62.1%、IVで14.3%で、直腸癌では病期Iで89.3%、IIIaで64.7%、IVで11.1%などでした。

7.大腸癌治療における当院の役割

当院では早期癌に対する内視鏡切除、浸潤癌に対する開腹手術(腹腔鏡手術を含む)、直腸癌に対する肛門温存手術など、初発癌に対する治療の確立されたものについては最新の方法をいち早く取り入れて治療にあたっています。再発に対しても、肝臓、肺、脳に転移した場合の手術療法、癌による腸閉塞に対するバイパス手術、最新の薬による抗癌剤治療など、全国トップレベルの治療を行っており、地域のみなさんがわざわざ遠くの病院に行かなくてもよいように日々努力しております。
一方で、脳転移に対する定位放射線治療や未承認薬による化学療法(研究段階のもの)などは、当院で採用していないものもあります。これらについては主治医の判断により他院を紹介する場合もありますし、ご希望があれば紹介しますので、主治医にお尋ね下さい。