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膀胱がん

1.膀胱癌とは

1)統計

膀胱癌は50歳以上に多く、男性が女性より3~5倍ほど頻度が高いことが知られています。喫煙者は非喫煙者に比べて4倍程度発生率が高いようです。近年、その発生頻度はやや増加傾向にあり、10万人あたり6~15人の発生率です。

2)組織分類

膀胱癌の90%以上が尿路上皮由来の移行上皮癌です。残り約6~8%が扁平上皮癌、2%が腺癌です。

3)治療の概略

治療法は、腫瘍の膀胱壁への深達度や腫瘍の分化度、転移の有無などによって異なります。主なものは、外科的切除、化学療法、放射線療法です。

  1. 外科的切除...内視鏡手術と開腹手術があります。
  2. 化学療法...抗癌剤を投与します。投与方法は経口、注射、膀胱内注入など様々です。
  3. 放射線療法...癌に向けて体の外から高エネルギーX線を照射します。

4)原因

一般的に大部分は原因不明ですが、タバコは膀胱癌のリスクを高めることは明らかで、喫煙者は非喫煙者に比べて4倍膀胱癌にかかりやすいと言われています。鎮痛剤の常用も危険因子のひとつです。また、特殊な染料や化学薬品などにおいては膀胱発癌作用があることがわかっています。

5)検診

検診では尿検査をします。尿潜血(+)以上の結果がでた場合、精密検査が必要ですので専門医を受診してください。

2.症状

もっとも多くみられる症状は無症候性肉眼的血尿(痛みも何もないのに尿に血液が混ざること)です。頻尿、排尿痛、残尿感といった膀胱炎と同様の症状をきたすこともあります。

3.診断

1)尿検査

顕微鏡で血尿の有無を検査します。

2)膀胱鏡検査

腫瘍の有無、部位、大きさ、性状を見ることが出来ます。

3)尿細胞診

尿中の癌細胞の有無を検査します。

4)画像診断

超音波検査、腎盂造影、コンピューター断層撮影などで腫瘍の広がりや深さを検査します。

4.病期(ステージ)

0期: 癌は膀胱の内側の組織のみにとどまっています。0a期と0is期に分けられます。
0a期: 乳頭癌とも呼ばれ、膀胱の内側から発生する小さなマッシュルームのような腫瘍
0is期: 上皮内癌とも呼ばれ、膀胱の内側の組織に広がる平らな腫瘍
Ⅰ期: 癌は膀胱の内側の粘膜の下の層まで浸潤しています。
Ⅱ期: 癌は膀胱の筋肉の層に浸潤しています。
Ⅲ期: 癌は膀胱から周囲の脂肪組織まで浸潤し、
前立腺、子宮、膣などの生殖器に浸潤していることもあります。
Ⅳ期: 癌は膀胱から腹壁または骨盤壁まで浸潤しています。
また癌はリンパ節や体内のほかの部位へ拡がっている(転移)こともあります。

5.治療

治療の根本は、膀胱を温存できるかどうかです。当院で行う主な治療法は手術療法(経尿道的腫瘍切除術と膀胱全摘除術)です。その他補助療法として、抗癌剤を点滴する化学療法・放射線療法・膀胱内薬液注入療法があります。

1)手術療法

(1)内視鏡手術(経尿道的腫瘍切除術;TUR-Bt)・・・

腰椎麻酔で尿道から膀胱へ膀胱鏡を挿入し、先端についた小さなループで癌を切除したり焼いて死滅させたりします。

(2)開腹手術(膀胱全摘除術など)・・・

全身麻酔でお臍の横から恥骨まで皮膚切開し、膀胱とその周囲の臓器を摘出します。男性の場合は前立腺と精嚢腺、女性の場合は子宮と膣の一部を摘出します。膀胱を摘出すると、尿を貯蔵し排出する臓器がなくなるため、新しい尿路を再建する手術(尿路変向術または代用膀胱造設術)が必要になります。尿路変向術は、尿道を利用せずに尿を体外へ排出させる手術で、小腸を利用する方法や、尿管を直接おなかの皮膚に縫合する方法などがあります。代用膀胱造設術は小腸を袋状に形成し、新しい膀胱として術前と同じように尿道から排尿できるようにする手術です。どの方法を選択するかは患者様の病状や全身状態により決まります。膀胱全摘除術のほかに、膀胱の癌がある部分だけを切除する膀胱部分切除術もあります。この手術では尿路変向術は必要ありませんが、適応は限られます。

2)化学療法

がん細胞を死滅、もしくは細胞分裂を阻害することによりがん細胞の成長を防ぐ薬剤を使った治療法です。投与方法は主に静脈注射ですが、膀胱へいく動脈に直接薬を注入する方法もあります。この治療で癌が完治することは通常期待できませんが、病巣を縮小させたり転移を防いだりすることは可能です。但し、化学療法では様々な副作用が起こり、時に生命に関わることもあります。吐気・食欲不振・骨髄抑制(貧血や白血球減少)・脱毛・腎機能低下・肝機能低下などがあり、これらの副作用の出方は処方内容や患者様の状態により異なります。副作用がおこれば可能な限り薬剤にて対処します。

3)放射線療法

高エネルギーX線を使用してがん細胞を死滅させる治療です。毎日少しずつ照射し、数週間治療を続けます。体の外から放射線をあてるため、膀胱以外の照射部位(皮膚や直腸)にも皮膚炎や直腸炎などの合併症がおこることがあります。

施行レジメン一覧

番号レジメン番号レジメン名
1 12130010_13 ≪HD-M-VAC≫ MTX + VLB + ADM + CDDP (30/3/30/70)
2 12130020_13 ≪M-VAC≫ MTX + VLB + ADM + CDDP (30/3/30/70)
3 12130030_9 MTX + VLB + ADM + CBDCA (30/3/30/280)
4 12130040_12 ≪GC≫ GEM + CDDP (1000/70)
5 12130060_12 ≪M-VEC≫ MTX+VLB+EPI+CDDP (30/3/50/70)
6 12130210_4 ≪CYVADIC≫ CPA + VCR + ADM + DTIC(500/1.5/50/250)
7 12130220_6 GEM + CBDCA (1000/5)
8 12130250_3 ★GEM + PTX (1000/180)
9 12130260_5 ≪GC(3-week)≫ GEM + CDDP (1000/70)
10 12130310_2 CBDCA + VP-16 (5/101) (泌尿器小細胞がん)
11 12130330_1 mFOLFOX6 (尿膜管癌)
12 12130340_1 ≪IP≫CDDP + CPT-11 (60/60) (神経内分泌小細胞がん)
13 12130350_2 AMR (40) (div) (泌尿器小細胞がん)
14 12130370_1 キイトルーダ (200)

6.進行度別治療法

治療方針を決定する重要な因子は、病期・腫瘍細胞の異型度(癌細胞の顔つきのことで、一般的に異型度の高い例の再発率は高い)・上皮内癌の有無です。以下に治療法と適応となる病期を示します。

0a・Ⅰ期: 経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)を行うことが主です。
術後に再発を予防するための薬剤を膀胱内に注入することがあります。
0is期: 平らな腫瘍のため内視鏡で切除するのは困難です。
この病期ではBCG(結核菌)を膀胱内に注入する治療を行います。
Ⅱ・Ⅲ期: 開腹手術(膀胱全摘除術)を行います。
手術後に化学療法を追加することもあります。
Ⅳ期: 化学療法、放射線療法が主ですが、
状況に応じて尿路変向術のみを行うことがあります。

7.予後

予後は膀胱癌の病期と選択された治療のタイプによりますので、以下の数字はあくまで参考になるものであり、個々の患者さんに当てはまるものではありません。
5年生存率はだいたい0a期で90%、0is期で83%、Ⅰ期で87%、Ⅱ期で77%、Ⅲ期で50%、Ⅳ期では28%です。表在性の膀胱癌は致命的になることは稀ですが、この癌は膀胱内に多発し、何度も再発することが特徴です。そのため、定期的に検査を行い、観察していかなければなりません。また、再発を繰り返すうちに浸潤性癌へと性質が変化することがありますので注意が必要です。